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竹中工務店のBIM・建築DX — SUMIDASと内製設計BIMが示す独自路線

スーパーゼネコン竹中工務店のDX取り組みを公開情報から読み解きます。自走式墨出しロボSUMIDAS、設計BIMツール内製、搬送ロボ、3社相互利用、建設RX参加までを整理します。

#竹中工務店 #SUMIDAS #ゼネコンDX

スーパーゼネコン5社のなかでも独自路線を歩んできたのが竹中工務店です。自走式墨出しロボ「SUMIDAS」、自社開発の「設計BIMツール」、ゼネコン3社相互利用、建設RXコンソーシアムの中核としての活動と、建設DXの主要トピックに必ず名前が登場します。本記事では公開情報をもとに、竹中工務店のBIM・建築DXの全体像を整理します。

竹中工務店のDX推進体制

竹中工務店は2021年に経済産業省から「DX認定取得事業者」の認定を受けており、社内のデジタル変革は「デジタル変革推進タスクフォース」が中心です。本社の管理系・プロジェクト系部門と本支店のデジタル化推進責任者で構成され、デジタル室が事務局を担う体制となっています。

技術基盤としては「建設デジタルプラットフォーム」を自社構築し、設計・施工・維持管理のプロジェクトデータと、人事・経理などの事業データを一元管理しています。AWSをベースとしたこのプラットフォーム上で、BIMモデルやコスト情報、現場のIoTデータが統合され、AIによる利活用が進められています。2026年までにBIMモデル中心の業務を定着させ、2030年にはデータが循環する付加価値提案を目指す、というロードマップも語られています。

自走式墨出しロボット「SUMIDAS」 — 98秒を33秒へ

竹中工務店のDXを象徴するのが自走式墨出しロボットです。墨出しは床や壁に施工の基準点を描画する作業でほぼ全職種に必要ですが、熟練工2名で行う従来のやり方では技能者の高齢化や担い手不足が深刻化していました。

2019年4月、竹中工務店はメルセデス・ベンツ日本との共同体験施設「EQ House」と事務所ビル建設現場で自走式墨出しロボットの試験導入を実施しました。OAフロアの支持脚位置や機器アンカー位置など92カ所の墨出し作業を行い、描画精度は平均2mm以下と作業員と遜色のないレベルを達成しています。OAフロア1点あたりの所要時間は従来機の98秒から33秒に短縮され、約3倍の生産性向上を実現しました。100平方メートルの墨出しは約4時間で完了します(出典:ニュースイッチ竹中工務店ソリューションサイト)。

注目すべきは、この成果が「高価な機材を投入したから」ではない点です。ロボット本体は450×723×320mm・重量約20kgで宅配便で送れるサイズに収まり、安価な市販3次元レーザー測量機とペンプロッターを組み合わせ、移動距離が最小となる順序でロボットが作業計画を組み立てる仕様です。「簡易な構成で小型・軽量、機器コストの低減を追求」した開発思想は、現場本位の発想を感じさせます。

この自走式墨出しロボットは、レンタルのニッケン・未来機械との共同開発を経て「SUMIDAS(LM-100-L-1)」として商品化され、2023年1月からレンタル提供が開始されました。CADデータからクラウド上で作業データを生成し、前営業日終業時にセットアップしておけば翌日始業までに墨出しが完了するワークフローです。

設計BIMツールの内製

ロボットと並び竹中工務店のDXを特徴づけるのが「設計BIMツール」の内製です。2024年3月、竹中工務店は公式プレスリリースで、設計情報の一括管理・設計作業の自動化・BIMモデルの自動品質チェックをパッケージ化した自社開発ツールを発表し、同年から基本設計に着手する全プロジェクトに適用を開始しています。

このツールは3つのソフトウェアで構成されます。

構成要素役割
設計ポータル建物の「情報」と「形状」を分離してクラウド上で一括管理
設計アプリケーション建築・構造・設備の24種のアプリで設計作業を自動化
モデルチェッカー各分野のBIMモデルを重ね合わせ、整合性や納まりを自動検証

根底にあるのは、BIMの「I(Information/情報)」を特定のBIMソフトに閉じ込めず最適なアプリケーションで処理するという考え方です。敷地情報などのソーシャルデータと連携しながら、ZEB検討・騒音シミュレーション・構造計算を同時並行で走らせ、複数の設計提案を短時間で施主に提示できる体制を目指しています。「設計者の勘と経験で1案を煮詰める」やり方から「データで複数案を走らせ施主と一緒に選ぶ」スタイルへの転換です。

実装面でも工夫があります。施工図担当者がBIMマネージャーを兼務して設計と施工の橋渡しを担い、重ね合わせ検討会には設計者も随時同席する体制を組んでいます。国際標準フォーマットIFCを介してSolibriやStreamBIMと連携する「オープンBIM」の姿勢を保ちつつ、自社業務に密着した部分は内製で固める。この使い分けが竹中工務店のBIM内製戦略の真髄です。

搬送ロボと3社相互利用

施工フェーズでは、竹中工務店は鹿島建設・清水建設との連携をテコにロボット活用を加速しています。2019年12月に鹿島建設と竹中工務店が締結した協業に、2020年10月、清水建設が新たに参画し、3社でロボット施工・IoT分野の技術連携に関する基本合意書を結びました。対象はロボット・機械装置・ソフトウェア・IoT技術で、新規技術の共同研究開発、既存技術の機能向上、そして実用レベルに達した既存ロボット技術の「相互利用」に取り組む内容です。

3社連合の中核を成すのが、竹中工務店が開発した「建設ロボットプラットフォーム」と、鹿島の「自動搬送管理システム」です。前者はBIMデータを活用してロボットの自律走行経路をシミュレーションし、遠隔操作・遠隔監視を可能にする基盤です。竹中と鹿島が共同開発した「スクイニー」、清水建設の「ロボキャリア」などの搬送ロボがこの基盤の上で連携し、仮設エレベーターと通信して資材を運ぶフローが実現しつつあり、生産性向上目標として20%が掲げられています。

各社が個別にロボットを開発するやり方では研究開発費も生産コストも下がりません。標準化された基盤の上で各社のロボットが動けば量産効果が効き、協力会社のオペレーターも複数現場でスキルを使い回せます。竹中工務店は「業界標準」を一社で抱え込まず、ライバルと並走する形で育てる道を選びました。

建設RXコンソーシアム — 標準化を主導

3社連携を広げた枠組みが、2021年9月発足の「建設RX(Robotics Transformation)コンソーシアム」です。当初16社のゼネコンで発足し、現在はゼネコン29社・関連企業194社が参画する業界横断団体に成長しました。竹中工務店からは常務執行役員の村上陸太氏が会長を務めています。

2025年10月、竹中工務店プレスリリースで、竹中工務店・鹿島建設・大林組・フジタの4社共同提案体が「ソフトウェアの標準化技術を活用した建設ロボットシステムの研究開発」に着手することが公表されました。4種類のロボットシステム — ①資材自動搬送(竹中工務店)、②風量測定(鹿島)、③耐火被覆吹付け(大林組)、④汎用移動ロボットの多機能化(フジタ) — の研究開発を通じ、自己位置推定・経路計画・物体検知などのプログラムを「SIモジュール」として標準化し、複数ロボット間での共有を実現します。

ハードを共通化すると各社の機構ノウハウや特許が衝突しますが、ソフトウェア層で共通化すれば各社のロボットが個性を保ったままBIMデータや現場マップを共有できます。竹中工務店の「建設ロボットプラットフォーム」の発想が業界標準として広がる流れが見えてきます。

競合比較 — 各社のDX戦略の重心

スーパーゼネコン5社のDX戦略は、表面的には似たキーワードが並びますが、重心の置き方には違いがあります。

企業DXの重心代表的な取り組み
竹中工務店設計補助・BIM内製・ロボット標準化設計BIMツール、SUMIDAS、建設ロボットプラットフォーム
鹿島建設自動化施工・現場管理A4CSEL、自動搬送管理システム
大林組設計と現場のバランス型BIMマネジメント、ロボット内製
清水建設ロボット重点Shimz Smart Site、ロボキャリア
大成建設維持管理データ基盤T-BasisX、デジタルツイン保守

竹中工務店の特徴は、「設計BIMから施工ロボまでを自前で内製しつつ、標準化は業界共同体で進める」というハイブリッド戦略にあります。建築専業として設計上流のデータ品質を磨き、BIM・ロボット・維持管理へ流す設計を行っている点が独自です。

業界示唆 — 協力会社にとっての新しい競争軸

竹中工務店のDXが業界に与える示唆は3点に整理できます。

第一に、設計上流のBIMデータがそのまま施工・搬送ロボットに使われる時代が動き始めています。協力会社・専門工事会社にとって、IFC形式での連携、属性情報の品質管理、クラウド経由でのデータ受け渡しといった対応が前提になります。

第二に、ゼネコンが「ロボット共通基盤」を業界連合で整える流れは止まりません。標準化されたソフトウェア層に対応したロボットを選定するほうが、現場での流用性も高まります。

第三に、竹中工務店と取引する協力会社にとってDX対応そのものが新しい競争軸になります。SUMIDASのオペレーション、設計BIMツールから流れてくるモデルの読み取り、搬送ロボとの動線調整に対応できる職長・技能者を持つことが、案件獲得の差別化要素として効いてきます。設計BIMツールがすでに全プロジェクト適用フェーズに入っている事実は、対応の遅れが受注機会の損失に繋がる可能性を示唆します。

参考・出典

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