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清水建設「Shimz Smart Site」全貌 — 3種のロボットが変える施工現場のリアル

スーパーゼネコン清水建設の次世代生産システム「Shimz Smart Site」、3種のロボット(Robo-Carrier・Robo-Welder・Robo-Buddy)、設計から施工・FMまで貫く「Shimz One BIM」、中期DX戦略の全体像を、公開情報をもとに読み解きます。

#清水建設 #Shimz Smart Site #ゼネコンDX

スーパーゼネコンの建設DX競争が加速するなか、ロボティクスとBIMの両輪で「デジタルゼネコン」を標榜してきたのが清水建設です。2018年発表の 「Shimz Smart Site」 は、3種の自律型ロボットと統合管理システムを束ね、新大阪のホテル現場で初適用されました。以降、設計〜竣工BIMを貫く「Shimz One BIM」、AI施工管理、都市デジタルツインへとピースが広がっています。本稿は公開情報を横断し、現在地を読み解きます。

清水建設のDX推進体制 — 「超建設」とデジタルゼネコン

清水建設のDX推進は社長直轄の デジタル戦略推進室 が中核を担い、2024年4月公表の 「中期DX戦略〈2024-2026〉」 では3年で DXコア人財120名・デジタル活用人財2,000名以上 の育成を掲げました(清水建設)。現場のロボット施工と生産プロセス改革は 建築総本部 生産技術本部、研究開発は技術研究所「NOVARE」が担い、DX推進部には各技術系部門の人材が兼務で配属されます(IoTNEWS)。方針名は「超建設」。2019〜2023年度の中期経営計画でデジタル投資と関連技術開発に500億円を計上し(日経クロステック)、「DX注目企業」にも複数年選定されています(清水建設)。

Shimz Smart Site の全貌 — 2018年新大阪から始まった次世代生産システム

Shimz Smart Site は、ロボット群+統合管理プラットフォーム+BIMを1つのシステムとして設計した次世代建築生産システムです。初適用は2018年、大阪市淀川区の高層ホテル 「からくさホテルグランデ新大阪タワー」(地上21階)で、資材搬送・鉄骨柱溶接・天井ボード貼りの3工程に投入されました(清水建設)。事前にロボット実験棟で自律制御をBIMと連動させる検証を済ませており(清水建設)、BIMの位置情報をロボット座標系に流し込む思想がShimz One BIMへの伏線となります。開発投資は約10億円超、基本機能の開発期間は約1年半(事業トピックス)。Robo-Carrierが20フロア分・累計1,000〜1,200パレットの搬送計画に組み込まれ、Robo-Buddyが吊り天井施工を担当。最初から実工事の数量計画に組み込んだ点が研究所デモと一線を画します。

中核となる3種のロボット — 搬送・溶接・内装

Robo-Carrier — レーザーセンサ × BIMで自律搬送

Robo-Carrier は水平搬送を自動化する自律走行ロボットです。レーザーセンサと BIM情報を照合して自己位置を推定し、障害物があればルートを自動で再計算します(清水建設)。2022年には派生機 「Robo-Carrier Fork」 を発表。SLAMで自律走行する無人フォークリフト型AGF(揚高3m・積載1t)です(日本経済新聞)。搬送は手待ちを生む典型工種で、自動化により他工種のロボット稼働率も底上げするシステム的な狙いがあります。

Robo-Welder — 開先をレーザー計測して自律溶接

Robo-Welder は鉄骨柱の現場溶接を担う一対のロボットです。溶接部の溝(開先)形状をレーザー計測で取得し、溶接条件(電流・電圧・パス数)を自律決定して多層盛り溶接を行います。2025年発表の最新世代では7軸アーム化により姿勢自由度が増し、時間あたり10〜12m、品質も技能者と同等まで到達したとされます(清水建設 2025年)。資格職人の高齢化が深刻な現場溶接で、自律機が「技能者並み」に達した事実は示唆的です。

Robo-Buddy — 2本の6軸アームで天井ボードをビス留め

Robo-Buddy は、負荷の大きい天井ボード取り付けを担う多能工ロボットです。2本の6軸アームで下地材(野縁)位置を認識し、片腕でボードを持ち上げ、もう片腕でビス留めする分業を内製します。省人化に加え労務環境改善でも受容性が高い領域への投入です。

Shimz One BIM — 設計から運用まで貫くデータ基盤

Shimz Smart Siteが「現場側の自動化」なら、上流のデータ基盤が 「Shimz One BIM」 です。Autodesk Revitをベースに、企画から実施設計・施工・FMまでを一貫したBIMデータで運用します(清水建設)。特徴的なのが竣工BIMの事業化で、2023年には竣工BIMをクラウドで運用・維持管理向けに提供する新サービスを発表。2D竣工図しか残らない既存ビルのBIM化や既存BIM更新を、中規模オフィスビル概ね200万円〜で打ち出しています(清水建設建設ITブログ)。子会社プロパティデータバンクのFMクラウド「@Property」と連携し修繕履歴をBIM上で可視化する流れが整い、構造Revitを鉄骨ファブ向けに自動変換するツール「KAP for Revit(K4R)」 も開発済み(BuildApp News)。竣工BIM化とFM連携を商用サービスとして外販する点で、一歩踏み込んだポジションです。

AI活用とスマートシティ

AIによる品質・施工管理も並走します。「コンクリート締固め管理システム」 はバイブレータの挿入位置・深さ・時間をAIで解析し、5G経由で約8分でフィードバックする仕組み(清水建設)。安全管理ではLightblueと組み、現場カメラから危険姿勢や立入禁止区域への侵入を自動検知Lightblue)。インフラ点検ではリコーと共同で AIとデジタルツインによるひび割れ自動抽出を発電所などに展開しています(Mogura VR News)。スマートシティ領域では豊洲6丁目エリアでAutodeskと都市デジタルツイン基盤を整備し(清水建設)、2022年開業の 「ミチノテラス豊洲」 で**日本初の「都市型道の駅」**機能との組合せ検証を進行中(清水建設)。発信拠点としては2024年に東京・潮見の 「温故創新の森 NOVARE」 を開所済みです(NOVARE Lab)。

競合との比較 — スーパーゼネコン5社のポジショニング

スーパーゼネコン各社のDXは重心が異なります。乱暴に整理すれば、鹿島は土木の自動化施工(A4CSEL)、大林は設計BIM+個別工種ロボ、竹中は設計補助+墨出し/搬送ロボ、大成はFM・保守の基盤、清水は建築のロボット施工+設計〜FMのBIM連携という色分けです(キャパ建設DX)。清水建設のポジションを際立たせるのは、現場で動く3兄弟ロボット事業化された竣工BIMという、上流と下流の両端に商品レベルの成果物がある点で、1つの建築現場で複数工種を同時にロボット化する設計ゆえに現場オペレーションのノウハウが蓄積されやすい構造です。

業界全体では2021年発足の 「建設RXコンソーシアム」 が転換点となり、鹿島・竹中・清水を発起人に当初16社から2022年4月には73社規模へ拡大。施工ロボの共同開発と標準化で個社差別化から共通インフラへの置き換えが進み(建設ITブログキャパ)、清水建設も「共通基盤+自社拡張」へシフトしています。

業界への示唆 — ロボットとBIMを「1つの生産システム」として設計する

Shimz Smart SiteとShimz One BIMを俯瞰して見えるのは、ロボットとBIMを別々のR&Dテーマにせず、1つの生産システムとして設計する発想です。BIM座標でRobo-Carrierが自走し、BIMの鉄骨情報でRobo-Welderが溶接条件を決め、竣工BIMがFMクラウドへ渡る——この流れが戦略の骨格です。中小工務店や設計事務所、サブコンの目線では次の3点が学びどころです。

  • BIMデータの「使い先」を最初から設計する。施工計画・積算・ロボット制御・FMのどこに流すかを決めてから入力ルールを揃える順番が重要です。
  • ロボットは「単機の能力」ではなく「現場の段取り」で評価する。律速工種を起点に選ぶ視点が要ります。
  • 業界共通基盤に乗り、自社の差は別レイヤーで作る。運用やBIM連携の上に付加価値を載せる構図がスタンダードになります。

上流のBIM・現場のロボット・下流のFMを一気通貫で考える思想は、規模を問わず応用可能なフレームワークです。自社ロードマップを描き直すための鏡として活用したい事例といえます。

参考・出典

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